とりあえず今回は、オススメの本をイッパツということでどうでしょう?その本の名前は、『世界最高のレーシングカーをつくる』(光文社新書)
。タイトルからしてめっちゃくちゃ刺激的。近頃珍しいくらいにキリッとした日本語だなとも思った(レーシングカーが日本語かという話はともかく)。林義正という著者名にいささか見覚えがあったこともあってソク購入。林さんというのは、もと日産にいたエンジン設計者。退社して、現在は東海大学の教授をやっている。
で、これがもう、めっちゃくちゃオモシロかった。日産に広報車(たしかプリメーラの6MT)返したあと銀座の本屋で買ったうちの一冊だったんだけど、銀座の駅から地下鉄乗ってさっそく読みはじめたらやめらんないとまらない。乗り換えすんのもヤダってくらいに熱中してしまった。二宮金次郎状態。冗談抜き、最近乗ったどんないいクルマより熱中した。本のなかに書いてあったことだけど、林センセーの講義は大人気でモグリの聴講者も多いらしい。「そらムリもないわ」と思った。
このワタシがいうのだから間違いないところであることに、エンジンその他自動車関連技術の専門知識は一切なくても楽しめる。でも、自動車技術的に示唆に富む記述は豊富。「素質に優れるNA(自然吸気)のエンジンでは、少し過給するだけでドラスチックにハイパワーが得られる」とかね。いいでしょ?
もう、赤線引きたくなるくらい。
ほかにも、たとえば2.8mmの倍の5.6mmの穴にするとそこを通るオイルはジョバーッと出る小馬のションベンのごとしだとか。あるいは、火炎伝播の良好な燃焼室の形状は18歳の女子高生のふくらみはじめのオッパイのごとしだとか(ふくらみはじめのオッパイなら18歳じゃねえだろうと思う人はますますこの本を読まないといけない)。そういうふうにいわれると、イメージがリアルになるじゃないですか。エンジン騒音を画期的に低減したベアリングビームのヒントが逮捕者(複数)を逃げられないよう繋げとく腰紐だったりとか、急速燃焼のためのツインプラグのヒントが「多点連続放火魔」という新聞の見出しだったりとかも、かなり“おおぉ”でしょう。
いいエンジニアになるためにはウマい食事と異性に対する興味を失ってはダメだ、みたな記述もまたヒザを打つ思い。だいたいこの人、その昔のグループ4用に作ったエンジンに当時のガールフレンドの名前つけちゃったんだから。梅子さんのUと義正のYでUYエンジンだって。「ボルトとボルトのピッチも23の倍数にした。なぜなら彼女の年齢が二三歳だったからである」(笑)。ニッサンだから二三じゃなくて。しかも、その梅子さんていまの奥さんじゃないのにヘーキで書いてる。
そうかと思うと、チーム監督になって92年のデイトナ24時間で優勝したときの話とかはこれは思いっきり泣ける。ワタシの場合、アルファ164クワドリフォリオに初めて乗ったときと同じくらいかもっと泣けた。はたまた、少年時代に疎開先でイジメにあって“負けるもんか”でカバンに短刀とチェーンをしのばせてた話とか。「今の中学生がバタフライナイフを持っていると教育者はびっくりする。しかし、あのころの私は……」。 ゴム動力の模型飛行機でズバ抜けた滞空時間記録を作ったりとか(ゴム動力を使い切った後にプロペラを折り畳むシカケを考えるあたりがスゴい)、あるいは赤字続きだった大学の自動車部の経営状態をイッキに改善してしまったりとか、そのへんのエピソードは後年のエンジニアおよびチーム監督としての成功を早くも予感させるモノがある。
とにかく、そういった次第で血沸き肉躍る記述満載。680円+消費税は激安。文章の感じはナカムラヨシオさんみたいなクラシックな(あるいは戦前戦中からのウルトラ級エリートならではの)名文調とはまた違って、いかにもバリバリの現役エンジン設計者っていう切れアジのスルドさがたまらない。いいレーシングエンジンと同じで、ムダ肉がない。
それとヘンな話、ビジネス書としてもめちゃくちゃ秀逸。もっというと、ホントの盛り上がりどこはここでは紹介いたしません。たとえば山形の会社の社長に頼まれてル・マン用のエンジン設計するあたりとか。
こういうスゴいの読んじゃうと、自分のエッセーなんて恥ずかしくて書けねえよなあ。そんなんでカネとったら詐欺だよ。“じゃあ次からのここの原稿をどうするつもりだ?”
といわれるとまた困るけど。
あとそう、こないだクルマ感想文コーナーに書いていたワッツリンクに関してちょうどいい実例があったので写真を紹介いたします。百聞は一見に如かずで、これならイッパツ。ひょっとして、こないだのワタシの説明には間違いがあったかもしれないけど、ひとつこれでカンベンして。
なお、これがナンのクルマかわかった人はイタ車雑貨店のEメールアドレス(taro@italiazakka.co.jp)まで答えをどうぞ。正解者のなかから抽選で1名様か2名様に、ワタシがテキトーな賞品を実費で買うか手持ちのモノのなかからテキトーに見繕うかして差し上げます。アルファ147の試乗会でもらったTシャツとか、どうでしょう?
「あ、そのTシャツってオータさんとこで売ってたわよ」。とはツマ談。「2400円で」。
ほかに手持ちでいうと、たとえばシボレーの時計。あるいはフォルクスワーゲンのハサミ+ペーパーナイフ革ケース入り。さらにはシトロエンのタイピン+カフスのセット。アタッシェケース風の小箱に入ったヘンケルスのネイルケアセットはスバルのロゴ入り。ロットリングの万年筆はVWのマーク入り。ヴィクトリノクスのカード型十徳ナイフはマツダのバッジつき。サーブのロゴ入りシャープペンシル。ルノー渋谷でもらったワインオープナーはロゴなし。新型レンジローバーのお披露目会でもらったアイスクリーム用スプーン。あとまだあった、ルノーとアウディのキーホルダー。ルノー・カングーのミニカー。すべて未使用(未開封ではありません)箱入り。
全部差し上げたいですね。これは。ただし、今回は正解を送ってくれた人の中から、抽選で3名様に、上記の品物からそれぞれ1点をプレゼント。詳しくは下記を!では、また来月。
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