ナンか寂しい、ほしいモノがないのって
突然ですが、皆さんこれがナンだか知ってますか(写真1)? 答えはレコードプレーヤー。型式名はSL-10。その昔70年代にテクニクスが出したヤツで、ディスク圧着とかトーンアーム水平移動とかの技術をブチこむことで本体を立てかけてのレコード再生を可能にした画期的なイッピン。しかも、タテとヨコのサイズはLPジャケットとほぼ同じ。
すごいソソるでしょ? ズッシリ四角いこのカタチ。実際持ってもすごいズッシリ系で、やっぱ重いってステキ。20何年前に、たしか10万円ぐらいしたんですよ。コドモゴコロに「かっちょいー!」と思ってた憧れの1台に、こないだ近所のセコい古道具屋で遭遇。見た目けっこう汚くて(中古オーディオ機器専門店と違ってキレイにするというアタマがハナからない)、しかもちゃんと音出るかどうかもわからん状態で9800円。正直「ナメんなよババア」だったけど、運命だと思って買ってしまった。ジョン・レノンの『ロックンロール』が入れっぱなしになっていて、それがまたヒュー(うらぶれてる感じ)。
ちなみにモリケータ、いわゆるオーディオマニアでは全然ない。聴けりゃいーじゃん派。しかもものすごいモノグサだから、わざわざ新しい針探したりなんだりして古いレコードプレーヤーをちゃんと使えるようにしようとは全然しない。なもんで、SL-10は我が家のオブジェ。粗大ゴミともいうかもしれない。
こういう感じの純粋な(笑)買い物を、私はいままで何度かしている。たとえば、同じテクニクスのレコードプレーヤーでDJ業界では超有名なSL-1200のMk3を約10年前に新品で。それから、ソニーのカセットデンスケの名機TC-D5M(写真なくてアレだけどかっちょいーのよこれがまた)を「絶版になる前にゼヒひとつ」とやはり新品で7、8年前に(まだ現役だと思う)。で、どっちもほとんど使ってまへん。TC-D5Mなんて、買ってから何年間も未開封状態だったし。メガーヌがカセットしか使えないんで、それ用に何本か録音しただけ。「あとはウォークマン・プロフェッショナルがほしいなあ」だって。バカ。
コドモの頃キョーレツにほしかったような感じでほしいモノって、考えてみたら最近はトンとない。どれそれのクルマを買いたくて仕方なくて夜も眠れないとか、別にならない。新車のフェラーリ買った誰それさんがうらやましい、なんてのもない。原因がモノ側にあるのか人間=私の側にあるのかわからないけど、いずれにせよそれってナンか寂しいねえ。
とかいいながら、買うモノは買っている。最近ちょっと嬉しかったのは写真2向かって右側のカメラ。オリンパスL3。隣のデジカメ=オリンパス・カメディアE-100RSと並べると「ハイ兄弟揃いましたね」って感じでステキ。やりたかったのよこれ。後発のE-100RSのほうがカタチ的にはどう見ても前期型、っていうところがまたなんとも味わい深い。ホントはあといっこ、同じオリンパスのE-10ていう一眼レフのデジカメも揃えないといけないんだけど、それはまだ中古でもけっこう高くて冗談では買えない。
L3は、なんの気なしに立ち寄った秋葉原はカメラのにっしんで見つけてしまってさあたいへん。特に希少でもないんだけど、探すとけっこう見つかりにくい機種なので「ここで会ったが百年目」。ちなみに1万8000円也。もちろん中古。こういう黒くて精悍なカタチの物体に私はどうも弱い。独自のコンセプトを貫いた結果いわゆる不人気モデルになってたりすると、さらに輪をかけてタマラナイ。
固定式つまり交換不可の高倍率ズームつきオートフォーカス一眼レフ、なわけですよL3って。35-180mmでF4.5-5.6の高性能EDレンズに、必要とあらば広角や望遠のアタッチメントをつけることも可。「これだけあればレンズ交換式一眼レフはいらない」というコンセプト。独自。合理的。そして中途半端(笑)。たとえばの話、クルマの外観から内装からひととおり自分で撮らなきゃいけないような仕事には最高なんだけど。露出補正がついてるからポジフィルムでもイケるし。
買ってみてわかったこと
あとそう、これはどっちかというと希少な人気モデルの話として、こないだ買ったM2のユーノス=1028。雑誌『ENGINE』の記事のなかで「たぶん遠からず売ります」みたいなことを書いたらば、読んだ人から合計3件ほど「売ってくれ」の連絡がきてしまった。自分の書いた原稿にこんなにアツいレスポンスを受けたことはかつてなかった。1オーナー走行2万km弱を160万円で買った個体に1万kmを上乗せしないうちに「80万円ぐらいでどう?」っていう部分も効いたみたいで。あと、嬉しかったのは「屋根のキシミの止めかた知ってますからご連絡ください」っていうのが一件あったこと。優しい人もいるもんだ。
そのM2。買ってすでに半年たつけど、まだ100kmちょいしか走ってない。ガレージに停めっぱなしではタイヤの変形が心配だからタマに動かしている、というぐらいの体たらく。さすがにそれではまだ売れない。乗った経験が血肉化してないから。全然。というわけでほしい人、もう少々気長にお待ちください。「80万円ぐらい?」と書いちゃったのは少し後悔してるけど、プライドにかけても可能なかぎりの安値でおゆずりします。
やっぱアレね。M2みたいな単能グルマは自分には基本的に合ってないということが よくわかった。買ってみてあらためて(笑)。ガラじゃないです。こういう走り屋系は。マイナーな中古カメラやレコードプレーヤーやカセットレコーダーは「買っても使わない」ってことを承知のうえで買ってたんだけど、M2のときは「これ買って走り屋になるんだ」って実はちょっと思ってた。恥ずかしながら。
普段は快適な暮らしの役に立ってくれて、それでいてときたま箱根やなんかでヤル気になったときにもスッとさりげに応えてくれる。そういうクルマがやっぱ私にはいい。だからまあ、一連のアルファなんかはけっこう理想的なんですよ。147にしろ156にしろ、あるいはスパイダーあたりにしろ。もちろんメガーヌでもいいわけだけど。特別ハイグリップなタイヤとかロール剛性の高いアシとか、別にいらないもん。ノーマルでトバせばいい。速さじたいは、それで十分すぎるくらいある。
考えてみたら、たとえ走り屋になったとしても東京だの川崎だのに住んでるかぎり峠なりサーキットなりでそれらしく楽しむ距離よりそこへたどり着くまでの(およびそこから自宅へ戻るまでの)道のりのほうがはるかに長い。やっぱクルマは普段普通に走ってるときオイシイのが一番だ、と思う今日この頃。そういえば、夏にプントのELXで裏磐梯の峠をえんえんカッとばしたときは溜飲下がったなあ。最高に楽しかったなあ。オレにはあのぐらいで十分なのかもしれないなあ。
というわけで今回の教訓。いまとちがう本当の自分がどこかにいると思うのはやめましょう。ありのままのいまの自分がどういうものか、よーく注意して見つめ直してみよう。でも、「そのままのキミが最高サ」なんて自分を許すのもよくありません。人生、難しい。「こんどの締め切りこそはスケジュールをキッチリ守って優等生で」なんて、いままで何度誓ったことか。 |