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第9回 ほんとは何が欲しいのか? (その1)

【森 慶太】
1966年静岡県生まれ。
筑波大卒。
自動車雑誌編集部を経て96年からフリーランスに。
著書に、「乗れるクルマ、乗ってはいけないクルマ」(三笠書房) 「『中古車選び』これだけは知っておけ!」(三笠書房)など。



丘の上で我想う

 事務所から自宅へ帰る途中にちょっとだけ寄り道。向ヶ丘遊園(先日閉園)の近くにある丘の上から、夜の東京をボーッと眺める。寒いんだけど、ヨッコラショっとクルマから降りてタバコでも吸いながら。高層ビルの赤いランプが何百個も点滅していてフンイキで、かすかに聞こえるゴーッというノイズもまたフンイキ。あれに見えるは新宿マンハッタン。

 で、それが最近は楽しいのでございます。寒いからすぐクルマんなか戻っちゃうけど、でも見ていて飽きない。季節がら、空気の透明度も高いみたいで。関東平野は河川の氾濫で削られてできたんじゃなく海面が隆起したタイプだからわりと起伏がある。で、写真のような景色に出会えることが珍しくない。

 あたりが静まり返った頃にこういうシチュエーションのなかでただ一人たたずんでると、人間はいろんなことを考える。普段はあまり考えないようなことを考える。「オレはこの先どこへ行こうとしているのか?」なんてね。思わず、自分を見つめなおしちゃったりして。

 あと、ワケもなく懐かしくなる。具体的な過去の出来事を思い出しているというのとは違うんだけど、でもなんかノスタルジアで。あるいは、将来のことなんてまだナーンも見当つかなかった頃の不安な気分がフーッと蘇る。ナイフみたいにトガってたゼ、あの頃のオレ(笑)。もっとも、将来の見当なんていまも全然ついてないけど。静岡県焼津市中根から茨城県新治郡桜村を経由してトーキョー、カワサキ。モリケータ37歳妻子アリ。♪思えば遠ぉくへぇ来たもんだあぁ♪……は武田鉄也センセーの歌ですね。

  そういう気分にボクも/ワタシもなってみたい、という皆さんにオススメのサイトとして『パノラマ東京レビュー』というのがある。http://www.t3.rim.or.jp/~kuri/panorama/で行けるはずですからひとつどうぞ。手持ちのパソコンのスクリーンの壁紙にサクッと使えるトーキョー夜景画像があったりしてけっこういいです。ワタシも使わせていただいております。気分、出ます。

 夜景や遠景にかぎらず、景色はいい。実物でも写真でもないけど、マンガの風景描写にもたまらなくグッとくるものがあった りする。たとえば『750ライダー』に出てくる70年代の東京都大田区周辺の街の様子とか、『がきデカ』の東京都練馬区(これも70年代)とか。当時の大田区や練馬区にいた体験がワタシにはまったくないけど、なぜだか非常にイイ。フリーズドライされてた昔の空気がワーッと拡がるみたいで、思わずジーッと眺めちゃう。時代が経ってストーリーとかは笑っちゃうものになったとしても、情景描写で手を抜いてないマンガはけっこう読める。というか見れる。ら抜き言葉はいけません。

 なんていうんでしょうか。要するに、時間や空間の感覚が普段とはガラッと変わるからイイのかもしれない。夜景とか昔の街の景色とか。それと似たような感慨をもつことがクルマに関してもあって(結局そっち方面かよ)、たとえば新車当時にタイムスリップしたみたいなウルトラ極上もんの中古車に出会ったりしたときは相当クラッとくる。で、実は最近、それがあったのですよ。


クリック一発、不見転(みずてん)で買う

 インターネット上の某オークションで見つけた、91年のベンツ190E。外装ミッドナイトブルー×内装ブルーの布で左ハン。ABSあり。エアバッグなし。ワンオーナーの実走2万5000kmで、写真見たらマジで新車みたい。内外装とも、完璧ガレージ保管じゃないと出せないフレッシュ感。「正直申し上げて、乗らずにとっといたみたいなクルマです」なんて書いてある。たしかに。

 190Eは、その昔二玄社の『NAVI』編集部にいた頃に長期テスト車をよく乗った。ディープブルー(いい色よ)で右ハンのアンファング、はパワーウィンドウとか集中ロックがないぶん安かった仕様。どうにもしっくり出ないドラポジやドアロック解除のメンドくささと同時にゼッピンの操舵感やゼッピンのオートマや同じくエンジンの音や振動やボディの鉄板の感じ……がその物件の写真見ててブワーッと蘇ってきた。モーレツな勢いで。

「あんないいベンツ、もう新車じゃ買えないんだよなあ一生」と思ったらモータマラン。画面端のほうにある入力欄に、希望落札価格そのまんまの数字と自分の暗証番号とを入力してしまった。で、パンパカパーン! 真夜中で精神状態が少しヘンだったのかもしれない。

「どーすんのよそんなことしてもー!?」とは、直後に電話で話したツマ談。語気に怒りが。いやまあ、キミが乗るのにもいいんじゃないかと思ってさ。「自分で運転するくらいなら毎回タクシー使うわよ! ホントにアンタって、一人で置いとくとロクなことしないわね」。あちゃー。

「現物を見もしないで買うなんて、そんなシロートみたいなことしてモリさーん。写真じゃわからないって、なんべんもいったでしょ。いままで取材でさんざんウチ来て、ボクの話とかナニ聞いてたの!?」とは、同じく直後に電話した知り合いのクルマ屋さん談。「ちなみに、ミッドナイトブルーは不人気色ですよ。あと値段だけど、僕らプロが仕入れるとしたらせいぜいその半分ぐらい。それも、コンディションがホントによくてしかもキューサンあたりの最終モノだったとして」。うーん。

 思い当たるフシはある。先日名古屋の某店で78年モノの(つまりオリジナルのデザインをほぼ完璧にキープした)レンジローバーのほぼワンオーナー長期ガレージ保管物件(電食とか全然なさそうだった)スペアパーツてんこ盛り付きに盛り上がり、更に前出クルマ屋さんちで94年のE280の超極上モノにヨダレを垂らし、あと先月は98年のレンジローバーの4.0の布シートの上モノに身震いした。つまり、マジでほしいクルマにわりと集中的に出会って気分が高揚していた。そうしたシツコい前戯によって生じた焦燥感ないし火照りが、まだ消えていなかった。

 まあでも、これはある種の運命的出会いでしょう。フェラーリ328でもポルシェ911でもなくベンツ190Eってのがかえってオレらしいや。モリケータと極上キューイチ190Eのその後がどうなったかは、次のこのコラムをゼヒお楽しみに。というのは、もったいぶってるわけじゃなくてホントにまだ落札しただけの状態だから。万一クルマがダメだったら、そのときは笑ってやってください。身体を張ってネタを提供することになりますな。





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