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第15回 モリ家の新築プロジェクト進行中(その4) 完結編

【森 慶太】
1966年静岡県生まれ。
筑波大卒。
自動車雑誌編集部を経て96年からフリーランスに。
著書に、「乗れるクルマ、乗ってはいけないクルマ」(三笠書房) 「『中古車選び』これだけは知っておけ!」(三笠書房)など。



できたんですよ

外観。黄色いドアが玄関で、玄関があるのが東面。南側の道路だけじゃなくて東側の私道もスロープなんで、ツジツマ合わせるのが大変だったみたい。
ガレージはゼヒとも完璧な平面(つまり傾きのない面)にしたかったんだけど、排水の都合とかも大事らしいんでそれはあきらめた。
オマエん家のその後がどうなったか教えろ、というリクエストがちょろっとあったみたい。なんで今回はその話。オンデマンドコラム。どうしてもいいたいこととか心のサケビとかあんまないほうなんで(ゼロじゃないけど)、アレコレ要求していただけるとたすかります。ホント、締め切りもないのにホームページとかマメに更新してる人はすごいと思う。私あたり、締め切りないとなーんもしないから。締め切りあってもしないっていう話もある。 

  家はまあ、できたんですよ。今年の1月アタマくらいに。でもってその中旬あたりから住みはじめていまにいたると。まだ半年もたってないんだけど、でもいかにも新築バリバリっぽい雰囲気ってすぐになくなりますね。匂いとか。アジの干物とか台所で毎朝バンバン焼いたりしてるともうダメ。それと、引っ越しして荷物入れちゃうともうダメ。家のなかの写真をかっちょよく撮りたい場合は、カラのうちに撮るのが鉄則。

  知ってると思うけど、住宅関係の雑誌とかテレビ番組とかで撮影するときは大規模なお片づけをするですよ。絵的にオイシクない小物や大物をガンガン移動させたりして。私も今回それやろうと思ったんだけど、思っただけでやめた。疲れちゃって写真撮れなくなるといけないから。あるいは、片づけが終わる前に暗くなっちゃうとタイヘンだから。

  ということで、概略こんな感じです。よくある安いデジカメだとレンズの広角側がせいぜい35mm(35mm版換算)とかしかなくてそれだとけっこうワケわかんないんで、ここぞとばかりコダックのDC4800を使用しました。素の状態で28mm(同)まであって、それにアダプターレンズをカマすとたぶん20mmかもっと広角。歪曲とかすごいけど。「買っといてよかった」とかいって(笑)。

  バックナンバーと重複しない内容を書くとなると、なに話せばいいんだろう? えーと、鉄筋コンクリ(下2階)と木造(3階)のハイブリッドというか併用で、建物のお値段はたしか3700万円とか3800万円(それより多くはどうやったって出せません、とデザイナー=設計者にいったことを覚えている)。ガレージ部分もコミで、延べ床面積はたしか140ヘーベーとか150ヘーベーくらい。要するに土地が狭い。最近知ったんだけど、この場所っていまの家が建つ前はご近所の皆さんの盆踊り大会の会場だったそうです。長いこと更地だったんで。近くの八百屋だったか肉屋だったかで買いものしたときにウチの妻が世間話して「あーあの盆踊り会場のとこね」っていわれて発覚。さぞやセコい盆踊り大会だったでしょうなあ。


ムダがなくてコンパクト

私の仕事場。本棚と机を作り付けでこしらえてもらって正解。しかし、あっという間に穴蔵みたいになっちゃった。 向かって右側(=東面)の壁にもドアがあって、それはガレージ直通。最初は土足で行き来しようと思ってたけど、なんかもったいないんで靴脱いでます。
 内部の構成は、まあ簡単ですよ。1階はガレージとその奥にある私の仕事場と、あとは玄関と階段。2階はLDKとトイレと風呂と洗面所。でもって3階は、寝室と子供部屋(になる予定)とクローゼットとトイレと洗面所。実にコンパクトでムダがない。実物とちょっと違うかもしれないけど、見取り図描いたんで参考にしてください。どうでもいいけど絵ぇヘタですね私は。

  で肝心の住み心地はというと、たぶんすごくイイんだと思う。「たぶん」なのは、引っ越したらアッという間にいまの環境がアッタリマエになっちゃったから。「洗濯機が家のなかにあるのがすごくいい」(妻談)とか、作った人らには聞かせらんないですよ。「隙間風が吹いてこないねえこんどは」(夫談)とかも。意外な発見としては、たとえば私の仕事場がかなり涼しそうだなとかね。2階や3階がムシムシになってるときも、下の部屋はまだヒンヤリしてて。

  それと、引っ越してきてからもう4カ月かもっとたつけど、私がちゃんと寝室のベッドで寝たのってまだ10泊もない。ほとんどLDKのソファーの前でゴロ寝してますね。「あー疲れた」つって横になって、そのまま朝まで。快適なんでツイツイ。最近少々疲れが溜まってきてるように思うのは、ひょっとしてそのせいかもしれない。

  まーでも、楽しいすよココでの暮らしは。ココっていうのは品川区小山のことなんだけど、庶民的で適度に雑然としてていい感じ。すぐ隣の品川区荏原とかは、わりとオカネモチの住宅街だったりするんだけど。

  夜寝て朝起きて、メシくって、コドモを保育園へ連れてって、でもってツマと2人で原宿の事務所/会社(徒歩1分ぐらししか離れてない)までルノーで。5時半過ぎになったらこんどはツマと2人で帰宅して、コドモ迎えにいってメシ食って……。最近の生活は、要はその繰り返し。だいたい。家と原宿の往復は朝夕とも30分ぐらいで、それもすごくイイ。あと、保育園まで歩いて3分てのも素晴らしい。首都高2号線の終点がすぐ近くで、試乗会とかいくときはそれもまたラクでラクで。

  でも、気のせいか最近カネないんだよな。ホント、毎月ギリギリ。アカ出てないのが不思議なくらいの綱渡り。妻も仕事に復帰したし、借家時代とほぼ同じくらいの経済状態でやってけるって話だったのに。どうして?「そんなの、アンタの稼ぎが減ってるってだけの話でしょ!」(妻談)。うるせーな。

と書いてたら、たったいま妻がココにやってまいりました。昼休みでメシ食いに出たついでに寄ったみたいです。


住み心地

2階のベランダ。LDKの南東の角のとこ。岡本太郎の鯉のぼりがかかっております。あと一匹いちばんでかいのがあるんだけど、スペースの都合で出しておりません。目隠し用の穴あきアルミ板は、たしか50%とか。つまり、開口率が。ここは物干し場兼、ワタシの喫煙スペース。どうでもいいけど、工事中にはオニーサンがたがバンバン吸ってたんだよな。室内で。
−−家の住み心地、どう?「アチコチにいっぱい散らばってた本を一カ所にまとめられたのはすごくいいわね。それもふくめて、収納スペースが1階と3階にまとめられているからLDKがゴチャゴチャしない。だから、狭いところでも狭苦しくない暮らしができる」。

−−あとは?
「あと、プライバシーが上手く確保できてるのもいい。外からの視線を効果的に遮ってあって、そのわりになかにいると解放感が高くて、つまり設計が上手いってことなのねきっと。窓の配置とか、景色の切り取りかたとか。イシカーさん(設計者)、最初からそのへんは盛んに気にしてわねえ。そういえば」

−−逆に、残念なとこは?
「残念ていうか、2階の勝手口のとこの庇の設計がちょっと。建ぺい率の関係で大きくとれなかったらしいんだけど、雨降ってるときはちょっとツラい」。

−−その程度?
「あとやっぱ、土地はもう5坪ほどよけいにほしかった。自転車とか、外に置けない」。

−−でも、あと5坪よけいにあったら俺たち買えなかったよ。あの土地。
「そうねえ。あと不満ていうか、この家ってアンタに都合よすぎ。ただでさえ狭いのにガレージあんなに大きくとったりとか、書斎があったりとか、ナマイキ。いったい誰のおかげでお金借りられたと思ってんの!? 冗談じゃないわよ」

−−じゃあ、建ててみてナンかわかったことってある? あるいは、これから建てる人々にアドバイス、みたいな。

「いちばん大きいのは、住む側の価値観や好みみたいなものを設計者がわかっててくれたのがよかったってことかしらね。細かいことでいうと、たとえば壁紙貼るのがキライだとか、一見ゴーカ風の化粧板よりはOSB(本来は構造用で表面には出さない)のほうがイイとか、そういうイロイロ。……ていうか、それってほとんどアンタの好みじゃない! 私はもっと……」

−−ロココ?
「ロココじゃないけど、あったの! いろいろ。といって現状に不満はないけど」。

−−じゃあ、いいじゃん。
「予算の外枠を最初に決めて、細かい装備関係のコストはその範囲内でオマカセでやりくりしてもらう、っていうやりかたもよかったわよね。どこかで増えたぶんは別のとこで削るとか。標準だとこれこれでオプションで●万円アップ、なんていちいちやってたらタイヘンだったと思う」

−−ゼッタイ、ヤんなってたよね。途中で。
「イシカーさんたちってホント働き者よね。とにかく、知り合いというかお友達に専門家がいたのは幸運でした」。

このへんちょっと補足しますと、こんどの私らの家を設計してくれたイシカー夫妻は私らが前住んでた家(借家)を設計した人(下に住んでた)のトモダチだったんですね。その借家を私らがけっこう気に入ってて、そこに来てもらってあーだこーだ話をした。現物を目の前にして。借家の設計者に新居の設計を依頼しなかったのはナゼかというと、その人ちょうどチュニジアにいっちゃってたから。「イシカーさん、自由が丘スイーツ・フォレストの設計した人ですって宣伝しといてあげなさいよ。個人住宅の仕事も募集中って」。

−−工事中のとこ見にいって、外壁のコンクリの表面の仕上げかたとか相談したよね。で、我が家もちょっとスイーツ・フォレスト風、かもしれない。コンクリ表面だけは。
「ファンデーションの色は同じにしたらしいわよ。それと、新しい家は外観が街並みに違和感なく溶け込んでるのも点数アップかな。で、なにかほかにご質問は?」

−−どうもありがとうございました。
「あとそう、勝手にアンタの口座からお金出さないでね。支払いが滞るから。必要なときは、まず私にいってください。あーもう1時じゃない! じゃあね」

という次第で、妻は去っていきました。ああ静か。めでたしめでたし。「試乗会の出欠、今日締め切りのがいくつかあったでしょ? ちゃんと出しとくのよ」。

うるせーなサッサといけ。
「ベッドでほとんど寝てないとか、そういう恥ずかしいこと書くんじゃないわよ」。

あーハイハイ(書いたけど)。


本を読んでます

モリケータは、家ではここでオシゴトをしております。クローズアップ。コンクリのせいか奥のほうにあるせいか、ケータイの電波が届かない。嬉しい。いや困った。家とは直接関係ないけど、100メガのケーブルTV回線は速い。そのせいで、事務所のISDNがタルくてタルくて。

  カネないんで、最近は昔読んだ本を書棚から引っ張り出して読み直したりしております。と、イイのよ。本の内容は(当然)不変でも、10年とかの間にこっちが変わってるから。ロバート・レイシー著『フォード』(新潮文庫たぶん絶版)とかデビッド・ハルバースタム著『覇者の奢り』(これも絶版だけど古本屋によくある)とか、もう何度目かなのにすごく新鮮。昔は素通りしてたところにもガンガン発見あって。それぞれ原著で読んでみる、なんてのもおもしろそうだ。

あとそう、トモダチに貸しちゃったんで題名よく覚えてないけど『SUVが世界を轢き殺す』って本もすごーくヨカッタ。これはつい最近出た本(翻訳モン)で、「(大型)SUVは周囲にとってもまた車内の人間に

とっても危険」という主張が背骨になってるんだけどカバーしてる世界がものすごくワイドでディープなんでクルマに興味ある人だったらグイグイ読める(私はたっぷり1日かけて通読してしまった)。『アンセイフ・アット・エニィ・スピード』(ラルフ・ネーダー著)と『覇者の奢り』(THERECKONINGというのが原題)を足して2で割った現在版、みたいな感じの大力作。ちょーオススメ。

それと、最近英語の試乗記の翻訳の仕事をよくやってるんだけど英語っておもしろいね。言葉ってのはいわば思考のための道具で、その道具が違うと当然思考の構造も違ってくる。原文のニュアンスとかストラクチャーをできるだけリアルに本国仕様のアジたっぷりに日本語にしようと頑張ってるんだけど、なかなか難しい(それだけにおもしろい)。興味ある人は洋書売ってる店いって『THE AUTOCAR』買ってきて(2000円はしない)、そこに載ってる記事と同じのを『AUTOCAR JAPAN』でも読んでみるといいでしょう。英語のインプレってもっとずっと(ヘタな日本語よりも)わかりやすいかと思ってたら、そうじゃない書き手もいるんだな。クリス・ハリスとか。

余談ついでにいいますと、翻訳者の文章がメチャ上手くてそれにググッときちゃうような例もある。たとえばハヤカワから出てるロバート・パーカーの“スペンサー”シリーズの翻訳やってる菊地光なんてちょーすげえ。試しに英語のヤツ何冊か読んでみたら、もっとずっとブッキラボーというかドライなのね。文法に適ってないいいまわしとか(もちろんワザと)でてきまくりで。どっちもすごくイイんだけど、でもアジはかなり違う。それこそ、近鉄モータースのショールームにあるリンカーン・タウンカーとアメリカでコキ使われてるフォード・クラウン・ヴィクトリアのパトカー(どっちも基本的には同じクルマ)ぐらい違う。ちなみにプチ暴露ネタとして、某雑貨店のシャチョーさんはその昔どっかのガッコーでエーゴのセンセーしてたんですよ。エラソーに教えてる姿が目に浮かぶっての。

つい長くなってしまいましたスイマセン。ではまた。


3階東側の寝室。ベッドともどもほとんど使ってないんで(私だけ)、なんかひとんちみたい。このベッド、引越し屋のアンちゃんから「入りませんねえ」っていわれたときはどうしようかと思った。入んなかったらシャレなんないよ。 3階西側のコドモ部屋(にそのうちなる部屋)。いまはほぼ、モノ置き場。イナカ(静岡県焼津市)から母親が来たりしたときはココで寝てもらう。ので布団があったりする。いまんとこ、寝室との間に壁はない。いや、あるんだけど完全には分離されていない。 玄関を入るとこの眺め。階段を上がってどんつきを右に曲がるとLDK。道路に面した壁とLDKとの間にワンクッション置く、っていうのが設計上のひとつのキモだったみたい。つまり、プライバシー確保の方面で。階段を上がらないでわきを進むと、その右側にはガレージとこちらを隔てるガラスのサッシ。あるいは、さらに進むと仕事場へ入るドア。 道路からトントンと階段上がったとこにある勝手口のドア。建物的にはここ2階。ていうのは、この家って坂道に沿ってたってるから。

2階のLDK。カーテンがあるのが南。玄関から階段を上がって、または勝手口から入って写真右奥のドアのところからココに至ると。建物とは直接関係無いけど、フジTV721でやってるF1中継放送は実にイイ。イマミヤはどーでもEけどカワイはいるし。 台所。英語で言うとキッチン。片岡義男風にいうとキチン(笑)。キャッシャーはキャシーア。「最近流行のIHクッキングヒーターとか、そういうのじゃなくてよかったの?」(夫)。「あれは料理するのが好きじゃない人のためのものなの」(妻)。僅か数ミリ厚くなるだけでイッキに高くなる人造大理石の天板。せっかくなんで、ちょっと厚いのにしてみた(夫の興味で)。 ガレージのなか。しょーがないってやそうなんだけど、ユーノスがいるほうの場所は出し入れがツラい。車庫入れ(というか車庫出し)初日に、そのせいでルノーの右リアフェンダーをカルくコスってしまった。ボーっと発進させちゃって。

1階の見取り図。 2階の見取り図。 3階の見取り図。




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