青春の思い出
ちなみに、今回のクルマのオーナーであるヤマシタさんは、ザッカテンによく来るお客さんの一人なわけだけど、30万円で買ったそうです。いわゆる個人売買で30万円で買って、それに30万円ほどかけたのが取材時の状態。60万円の極上物件。
大きなところでは、たとえば4輪のアライアメントをとり直してもらったら見違えるようにちゃんと不安なく走るようになったらしい。一方で、エンジン関係はとくにイジらず。歴代オーナーがちゃんとしたひとばかりだったようで、走行距離はたしか10万km超だったけどコンデションは快調そのもの。6500だろうとバンバン回る。中古車はキョリじゃワカラン、という格言の有効性を改めて確認させられましたね。もっとも、85年モノとしては十分に少走行物件なわけですが。
パンダのカップカーにすぐ使えるようにってことでアドバンのレイン用Sタイヤなんて履かされてたけど、乗り心地も特に終わってなくて。少なくとも、ツラくは全然なかった。ヘンな話、カローラ・ランクスあたりに乗ってるほうがよっぽどツラいですよ。
ヤマシタさんは、A112アバルトは新車のときからほしかった。気になっていた。当時の値段、いまでもソラでいえる。198万円とか。「ボクがレガータを買ったとき、ショールームにこれもあってねえ」なんつって。そういう個人的な青春の思い出がないと、こういうのはなかなか。つまりその、キッカケがね。つかめなくて。
若くてカネなくてピーピーしてた頃にほしくてもとうてい買えなかったようなクルマが、それなり余裕できたいまになって気がつけばまあ小遣いで買えないこともない値段で売られている。で、「おお」と。そういう盛り上がりが大事です。こういうのは。ストーリー。
逆に、いまカネなくてピーピーしてる若いひとがムリしてギリギリで買ってもあまりいいことはない、かもしれない。特に思い込みもなしに手に入れたぶん、ナンかあっときにガッカリするのも早いだろうし。だいたい、ヌオーバ・チンクエチェント買って「映画(だからあの、アニメのですね)みたく速く走れない!」って文句いったヤツがいるらしいですから。ホントかね、しかし。
だからまあ、いまこのコラム読んでる若いひとらは焦ることないですよ。もしいま好きで買えないクルマがあったらそれが買えるようになるのを待てばいい。そういうアコガレのクルマがあるってのはなんとも幸せなことですよ。ビアンキのアバルトぐらい乗っとかないとホントのイタ車好きとはいえない、なんてことも別にない。ないんだけど、でも最近パンダの中古が高いから。考えてみたら、ちっちゃくて安くて楽しめるイタ車っていまそんなにないですよ。むしろプントELXの新車でも買ったほうがてっとりばやい。
もしかしてこの写真を見てA112がほしくなっちゃった人のためにいっときますと、機関関係はじめパーツ供給は問題ないです。ボディが致命的にイガンでたりグサグサになってたりしないかぎりは大丈夫。それだって、カネかけりゃ戻りますよ。ヤマシタ号みたいなゼッコーチョー&ラッキー物件はそうそうないとしても、修理やメンテ方面はいくとこいきゃどうにでもなる。いい店、いい工場を知ってるかどうかがカギでしょう。逆に、そこさえおさえとけばこの頃のイタ車はヘタな新車のガイシャより不安がない。「あそこにもってきゃ大丈夫」ってのがなかったら、たとえばアタシもY10なんか買わなかったですよ。もう、絶対。あれこれトラブルで苦労してまで乗りたいほうじゃないですから。全っ然。
具体的にどこいきゃいいのかは、困ったんだったらたとえばイタ車雑貨店あたりできいてみてください。安いワッペンかなんかいいわけ程度に買っといて、その代金支払うときにでも。万が一それで教えてもらえなかったら、最後の藁のひとつかみとしては直接モリケータのとこへきてもらってもいい。直接はアレですけど、VEF03517@nifty.ne.jpまでメールをくれるとか。特に詳しかないですが、仕事がらいくつかはアテがあります。できれば焦ってヘンなのを買っちゃう前にひとつ。
あと最後、A112にかぎらずこのテの古いメのイタ車に関して少々。ヘンな先入観なく素直な気持ちで乗ってみて「こんなもんかなあ…」っていういまいちサエない感想を抱いたとしたら、それはクルマがどっかおかしいはずです。ナンかしら感動的な印象がなかったら買わないほうが、あるいはその状態では放っておかないほうがいい。基本的に、イタリアのクルマというのはクルマが、というか運転が好きなひとなら誰でも好きになれるようなものになってます。別にとびきりのマニアやヘンタイでは全然なくとも。もっといえば、それは新車でも同じですけどね。いーですよお。プントELXとか。
また一方、古いメのイタ車等に関してアナタの打ち明ける不満とか不安に対してお店や工場のひとが「こぉんなモンですよ」といったとしたらそれもおかしい。アタシの経験からして、ちゃんとしたとこのひとはいいわけや知ったふうなゴマカシをいわない。ホントに買おうと思ってるならそのへんも気をつけましょう。 |