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第5回 小気味よいちっちゃいクルマ アウトビアンキA112


【森 慶太】
1966年静岡県生まれ。
筑波大卒。
自動車雑誌編集部を経て96年からフリーランスに。
著書に、「乗れるクルマ、乗ってはいけないクルマ」(三笠書房) 「『中古車選び』これだけは知っておけ!」(三笠書房) 「買って得するクルマ損するクルマ―新車購入全371台徹底ガイド」 (講談社)他多数。最近、子供も生まれ、家も建て、ますます精力的に世界中を飛び回っている。


 22歳で免許を取り、自動車雑誌『NAVI』に入社したときにはバリバリの若葉マーク。
廃車寸前の86レビンで夜毎筑波パープルラインに通い、みるみる運転の腕前を上げていった若き日の森慶太は、それから10余年、今や気鋭の自動車ジャーナリスト。
明快な論点、みずみずしい視点、の森慶太が駆る。イタリア車ははたしてどうなのか。


イタ車版ミニ・クーパー


 

えー今回は、アウトビアンキのA112というクルマに乗ってまいりました。細かいことをいうとそれのアバルト。85年モノ。わかりやすさ優先で乱暴にたとえてしまえば、ミニ・クーパーのイタ車版みたいなものですかな。つまり、ただのミニじゃない。クーパー。なにしろアバルトってえぐらいですからもう。いまじゃ知らないひとも多いかわかりませんが、A112にはアバルトじゃないヤツもあったんですから。もっとおとなしいエンジンの。

 じゃアウトビアンキってなんだというと、これは早い話がフィアットであります。少なくともハードウェア上はまったくそう。おそらく127あたりの兄弟車。127つっても若い皆さんはワケわからんでしょうけども、要するに60年代テクノロジーのFF小型車。いまでいうとプントぐらいのところにいて、でもってルパンが乗ってたチンクエチェントよりはワン・デケイドほど世代が新しいかなという。

 アウトビアンキは昔は独立した自動車メーカーだったわけですが、この頃はすっかり名前だけ。でその名前がオウンド・バイ・フィアット。あるいはビロングド・トゥ・フィアット。いまでも持ってるでしょうから完了形にしなきゃイカンのかもしらんですけど、とにかく普通のフィアット車よりもちょっとスポーティな、あるいはパーソナルな、とにかくナンかいわくありげな感じで売りたいというときにフィアットがこの名前を使ったと。

 そういえば、ミニの場合も昔はオースチンとモーリスがあったりして。でやっぱ、「俺はただなんとなくクルマ乗ってる人間じゃないんだゼ」という気概のあるひとはわざわざモーリスを選んだりしたという。くだらないといえばくだらない差別化ですが、やっぱりそれなりのストーリーがあるわけです。バッジしか違わないといってもブランドには。

 なおA112のあとのアウトビアンキとして出たY10、ワイテンは日本以外ではランチア銘柄で売られておりました。ひょっとしてA112にもランチア版があったかわかりません。私は知りませんけども。でまたY10の次にはY=イプシロンというのがまだ現役でありますが、これはランチアだけ。ランチアといえば高級。



ある種のエアポケット

 さてA112アバルト。乗ったらどうかというとこれは、少なくとも今回チョイ乗りさしてもらった個体は、非常によござんした。写真でこの姿を眺めて「いいなあオモシロいんだろうなあ」とお好きな皆さんが想像たくましくされる、ほぼそのとおりのよさが実際にもあって。いやこれ、イチイチ説明すんのが面倒でそう書いてるわけじゃないですよ。わかりやすいでしょ?こっちのほうが。話が早い。  

 箱根ターンパイクの上りでもカッタルくないぐらいに痛快に速くて、マフラー関係がちょこっと変わってたってこともあったにせよエンジンの音なんか最高にゴキゲンで、サイズが極端に小さいからかえってコワくなくて、でもってナニよりいちばん大事なこととしては乗りやすかった。その意味では、パンダとも別に大した変わりないです。だいたい、エンジンからして最近並行で入ってる新車のパンダのと基本的には同じものだし。70HPとかだからスペックはパンダ用よりだいぶ高いけど、でも扱いにくくはなかったです。「サソリの毒」だとかナンだとか雑誌あたりは気のきいたつもりの見出しをよくつけますが、いっちゃえばただの小気味よいちっちゃいクルマ。だからこそいいわけで。あるいは、そうだからこそ「イタ車っていいな」と思えるわけで。健康的で。鬱屈してなくて。


 

たとえばエンジン特性がピーキーで下が使えないとか、あるいはハンドルが据え切時等クソ重くてとか、そういったネガがA112アバルトにはなかった。エンジン特性のピーキーさでいえば後のY10ターボのほうがはるかにヒドかったし、あるいはハンドルの重さでいったらこれもY10のほうがずっとキツかった。ただし、Y10のために書いとくと高速巡航時のハンドルの座りのよさはパンダあたりより確実にヨカッタですけどね。これはつまり、狙ってる方向が違うということで。しかし、最近はホントに減りましたね。Y10の物件数。ことにJAXが時代のヤツは皆無に近い。なかでもホントにアタリといえるFIREエンジン搭載モデルは、それこそ物件があったらアタシが買っちゃおうかというぐらいのもんで。前も一度買ったけど、素晴らしいクルマでした。ナンかの取材のとき「あったら買っちゃうんですけどねえ」つってたらカメラマンのひとが「いま家の近くの店に1台」。で帰り道に寄ってその場で契約という。それなりゼッコーチョーにするためにプラス20万円はかからなかったですよ。いい買いモンだった。

 エアコン、いやクーラー(高速巡航時には有効らしい)つきのせいで室内側ユニットがペダル操作のジャマに多少なるとか、あるいはブレーキがサーボなしなんで気合入れて踏まないとヌケてるみたいで(わかってても最初は)コワいとか。A112アバルト君関係でまだしもネガッぽいのはその程度。好きなひとにはタマラないこのルックス、および乗っての嬉しさの代償としては全然高くない。いやネグリジブルかもしれないですよ。

 ルパンのチンクエチェントあたりをいま普通に乗りこなそうと思うとけっこうジゴクというか要職人級テクですが、これだったら別に心配しなくていい。ヘンな話、高速道路あたりでは現行の軽自動車の安い仕様なんかよりラクかもしれない。オソいトラック抜くのにタイミングを狙いに狙って、みたいな苦労がないぶん。その意味でも、アバルトのありがたみがちゃんとある。たんなる希少価値やウンチクとはまた違った種類の。

 それからまた、このテのクルマは細いタイヤで元気な運転を楽しめるところも魅力として大きいでしょうね。いうまでもなくA112アバルトの走りのキャラはスポーティ系なんだけど、それがオリジナルでいうと145とか155サイズのしかもハイトも十分に高いタイヤを前提にして成立している。だからグリップ限界が高くないだけじゃなく、その変化もピーキーのハンタイ。目を三角にして命をかけて、なんてことなしに、いわゆるトバす運転をタンノーできる。ゲンカイ域のキョドー、とかを勉強できる。サーキットまでいかなくてもいい。いまの乗用車で155なんてったら、たいていアシはもうただのヘロヘロですから全然楽しくない。少なくとも、いわゆる乗って楽しい系のアシの設定ではまったくない。その点ビアンキのアバルトは違う。

 あと、重要なポイントとしていまA112はある種のエアポケットみたいなところにいる。皆さんよーくご存じのとおり最近というか最近になってもまだ中古パンダがアホみたいに高い値段で流通していることを考えると、A112はむしろ大いに安い。けっこう程度いいヤツで85万円とかいう相場だから。そういっちゃナンですけど、たとえばフィアット126だって100万円に少々足りないぐらいはしてますよ。珍しい、数が少ないってだけで。あーんな、1速のシンクロもないようなクルマが(だからシロートさんは歯車おっ欠いちゃう)。



青春の思い出

 ちなみに、今回のクルマのオーナーであるヤマシタさんは、ザッカテンによく来るお客さんの一人なわけだけど、30万円で買ったそうです。いわゆる個人売買で30万円で買って、それに30万円ほどかけたのが取材時の状態。60万円の極上物件。  

 大きなところでは、たとえば4輪のアライアメントをとり直してもらったら見違えるようにちゃんと不安なく走るようになったらしい。一方で、エンジン関係はとくにイジらず。歴代オーナーがちゃんとしたひとばかりだったようで、走行距離はたしか10万km超だったけどコンデションは快調そのもの。6500だろうとバンバン回る。中古車はキョリじゃワカラン、という格言の有効性を改めて確認させられましたね。もっとも、85年モノとしては十分に少走行物件なわけですが。  

 パンダのカップカーにすぐ使えるようにってことでアドバンのレイン用Sタイヤなんて履かされてたけど、乗り心地も特に終わってなくて。少なくとも、ツラくは全然なかった。ヘンな話、カローラ・ランクスあたりに乗ってるほうがよっぽどツラいですよ。

 ヤマシタさんは、A112アバルトは新車のときからほしかった。気になっていた。当時の値段、いまでもソラでいえる。198万円とか。「ボクがレガータを買ったとき、ショールームにこれもあってねえ」なんつって。そういう個人的な青春の思い出がないと、こういうのはなかなか。つまりその、キッカケがね。つかめなくて。


 

若くてカネなくてピーピーしてた頃にほしくてもとうてい買えなかったようなクルマが、それなり余裕できたいまになって気がつけばまあ小遣いで買えないこともない値段で売られている。で、「おお」と。そういう盛り上がりが大事です。こういうのは。ストーリー。

 逆に、いまカネなくてピーピーしてる若いひとがムリしてギリギリで買ってもあまりいいことはない、かもしれない。特に思い込みもなしに手に入れたぶん、ナンかあっときにガッカリするのも早いだろうし。だいたい、ヌオーバ・チンクエチェント買って「映画(だからあの、アニメのですね)みたく速く走れない!」って文句いったヤツがいるらしいですから。ホントかね、しかし。

 だからまあ、いまこのコラム読んでる若いひとらは焦ることないですよ。もしいま好きで買えないクルマがあったらそれが買えるようになるのを待てばいい。そういうアコガレのクルマがあるってのはなんとも幸せなことですよ。ビアンキのアバルトぐらい乗っとかないとホントのイタ車好きとはいえない、なんてことも別にない。ないんだけど、でも最近パンダの中古が高いから。考えてみたら、ちっちゃくて安くて楽しめるイタ車っていまそんなにないですよ。むしろプントELXの新車でも買ったほうがてっとりばやい。

 もしかしてこの写真を見てA112がほしくなっちゃった人のためにいっときますと、機関関係はじめパーツ供給は問題ないです。ボディが致命的にイガンでたりグサグサになってたりしないかぎりは大丈夫。それだって、カネかけりゃ戻りますよ。ヤマシタ号みたいなゼッコーチョー&ラッキー物件はそうそうないとしても、修理やメンテ方面はいくとこいきゃどうにでもなる。いい店、いい工場を知ってるかどうかがカギでしょう。逆に、そこさえおさえとけばこの頃のイタ車はヘタな新車のガイシャより不安がない。「あそこにもってきゃ大丈夫」ってのがなかったら、たとえばアタシもY10なんか買わなかったですよ。もう、絶対。あれこれトラブルで苦労してまで乗りたいほうじゃないですから。全っ然。

 具体的にどこいきゃいいのかは、困ったんだったらたとえばイタ車雑貨店あたりできいてみてください。安いワッペンかなんかいいわけ程度に買っといて、その代金支払うときにでも。万が一それで教えてもらえなかったら、最後の藁のひとつかみとしては直接モリケータのとこへきてもらってもいい。直接はアレですけど、VEF03517@nifty.ne.jpまでメールをくれるとか。特に詳しかないですが、仕事がらいくつかはアテがあります。できれば焦ってヘンなのを買っちゃう前にひとつ。

 あと最後、A112にかぎらずこのテの古いメのイタ車に関して少々。ヘンな先入観なく素直な気持ちで乗ってみて「こんなもんかなあ…」っていういまいちサエない感想を抱いたとしたら、それはクルマがどっかおかしいはずです。ナンかしら感動的な印象がなかったら買わないほうが、あるいはその状態では放っておかないほうがいい。基本的に、イタリアのクルマというのはクルマが、というか運転が好きなひとなら誰でも好きになれるようなものになってます。別にとびきりのマニアやヘンタイでは全然なくとも。もっといえば、それは新車でも同じですけどね。いーですよお。プントELXとか。

 また一方、古いメのイタ車等に関してアナタの打ち明ける不満とか不安に対してお店や工場のひとが「こぉんなモンですよ」といったとしたらそれもおかしい。アタシの経験からして、ちゃんとしたとこのひとはいいわけや知ったふうなゴマカシをいわない。ホントに買おうと思ってるならそのへんも気をつけましょう。





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