唯一の違和感
要するに、やりたいことはひとつ。心はふたつない。で、あとは単純に道具だての問題であると。旧ティーポと同じ骨格同じリアサスでやるしかなかった145に対し、現行147の道具だてはアルファ専用度をググググググッと高めた156世代。その違いは、ものすごく大きいようでいて実際はそうでもない。別に145の試乗記でこのスペースを埋めることの正当性を主張したい一心でそういっているのではなくて、なによりワタシ自身が素直に感心しているのである。
たとえば、出た当初の155に初めて乗ったときは正直「ナンジャコラ!?」だった。トランスアクスルFRとエンジン横置きFFとの、あるいはド・ディオン+ワッツリンクとフルトレとのどデカい違いを乗り越えて、前任車75と同じ走りの世界を再現しようとしていた。優秀な重量バランスその他の素性があったから許されたフヌケ系の、あるいはユルめ系のチューニングをギリギリのFFプラットフォームでやるのは大いにムリがあった。で、大幅なテコ入れを経て156へたどり着いたそこからの道のりは要するに164化にほかならない。本当は、というかもっと深いところではこの場合も「心はひとつ」だったのだろうけど。
145に関するほぼ唯一の違和感らしき違和感は、エンジンのマウント。もっと具体的には、1速に入れてクラッチを繋いで発進するときにパワートレインがギクッと揺れやすいことだった。ワタシはそのギクッを出すのがものすごくキラいなので、ナニがナンでも出すまいとして死ぬほど丁寧にクラッチを繋ぐ。と、ゴゴゴッというこもりが一瞬出る。これまたいささか、嬉しくない。クラッチを多少多めに滑らし気味にして多少元気よく、その意味ではイタリア人風(?)にスタートすると上手くいくのだけど、ド渋滞のなかでそれを繰り返すのは少々ツラい。なんか、「ラテンのアツい血」(笑)信奉者みたいだし。
で、それ以外はホントにゴキゲン。運転姿勢はほぼ理想的だし(ただし、小柄な人だとシート位置は高すぎるかもしれない)、右ハンのペダル配置もヘンでないし(初期モノとは違うとの説あり)、多少ドタつくけど乗り心地も優しいし、シートもいいし。あとまあ、エンジンもいいしギア比の配分もいいし。上記のマウント問題も、乗ってるうちにどんどん慣れる。しばらくすると、ギクッもゴゴゴッも出さずに平気な顔で運転できる自分をほめてやりたい気分になってくる。似たようなクセをもつクルマにたとえば現行プントHGTアバルトがあるけれど、あれと較べたら145をキレイに運転するのはまだしも相当ラク。 |