Not under the control of Ferrari
「でも、なんか調子よくないんですよ」とナカタニさん。アイドリング時の振動が大きめで、「ひょっとしてマウントじゃないかと……」。が、乗ってみたところ全然大したことなし。回転がちょっとラフになってるだけ。マウントがイッてるクルマの振動は、こんなもんじゃないですよ。それこそ、歯がガチガチいうぐらいスゴいから。
ハズしたらゴメン!の覚悟でシロート見解を披露すると、おそらくバルブのクリアランスを指定値にキッチリ揃えるとこのテはピタッと止む。ハイドロリック・ラッシュ・アジャスター(いわゆる油圧タペット調整機構)なんてシャレたものはついてないだろうから。
「あと、駆動系からバックラッシュが出てるんですけど」。バックラッシュとはいわゆるガタ。たしかに、負荷や変速やその他の状況がツボにハマッてしまうとカクンと出ることがある。多くの日本車と違ってトルコンがシャラシャラじゃない(これはいいこと)なぶんわかりやすいということもあるでしょう。
聞いて感心したことに、ナカタニさんはスロットルペダルを踏み込むときも戻すときもそのガタを極力ださないよう気をつけているらしい。ドライバーの身体センサーを知らず知らず敏感に高精度にしてしまうところがマセラティにはたしかにあるけれど、それにしてもマジでエラい!
初めてマイカーをもって半年そこそこの最近の若いモンとは思えない。そういう感覚で接すれば、たとえばオートマの日本車が必ずしも運転しやすいわけではないってことがよくわかりますよ。初めてのマイカーがマセラティっていうのは、ある意味正解かもしれない。
実際、マセラティは基本的に運転しやすいクルマだと思う。運転姿勢や操作系の感触が少なからずカワッテはいても、タイヤとドライバーの手足の間のどこかに局部的にアイマイなグニャ系のナニモノかが挟まっていない。たとえば操舵反力にしても、いわゆるズシッと重い系ではないし路面からのインフォメーションが豊かなほうでもないけれど、ダッシュボードの向こうへ伸びているシャフトが目に見えるような感じでスッキリ芯が通っている。全体として、きわめてオトコらしい乗りアジになっている。
ただし、クワトロポルテのエボ(エボになる前のは乗ったことがない)や3200GTと較べるとシートは別モノのようにフンワリ系。それがタマラナイというマニアもいるときく。そのフンワリ系、第一印象のよさのみで勝負系かと思いきや都内を1時間ほど乗ってもまったく違和感なかった。誇張なし、身じろぎひとつすることなく快適に座っていられた。伸縮性豊かな表皮の印象も含めて、抜群のフィット感。モノの15分でイヤになるシートのクルマも多いなか、大したもんである。だいたいこれ、12年オチの中古車なのに。 |