ユーノスより速い
旧型スパイダーは、その特徴としてホイールベースが非常に短い。たしか2100mmぐらいしかない。軽自動車よりずっと短い。で一方、前後のいわゆるオーバーハング部分は明らかにデカい、というか長い。エンジン搭載位置もけっこう前よりだし、またトランクの床下には燃料タンクがある。曲がるの大好きなんだけどイヤな敏感さがなくて直進安定や乗り心地も悪くないのはその基本ディメンションによるところが大きいと私は見ている。
運動性と快適性の妥協点を上げるためのテとして最近はロングホイールベース+ショートオーバーハングがむしろ一般的だけど、つまりそれとまったく逆のことをやっている。ビシッとではなくフワッと落ち着いた独特のクルマの動きはさしずめヤジロベエみたいで、そういったらムロヅカさんも納得してくれた。ドライバーがホイールベースの真ん中にいるような感じもふくめてヤジロベエ。
エンジンや足まわりの設計は、皆さんがよく知っている古いジュリア系と基本的に同じ。フロント(ダブルウィッシュボーン)のロワーアームにバネの受け皿(?)がついてるところとか、あるいはリアの伸び側のストロークを布のベルトで規制しているところとか、左右2本のトレーリングアーム+デフのとこで1箇所T字型のアームで吊ってるところとか、とにかくおんなじ。下から覗き込むとその見た目のアンティーク度のキョーレツさにビックリする。だいたいこのリアサス、方式としては戦後第一世代から同じといえば同じだし。
ただし、そのアシが乗ると非常にイイ。舗装の荒れようと速度の関係によってはドタつくこともあるけれど、概して接地性は非常に高い。特にリアの。横方向の支持リンクをもたないリジッドアクスル特有のユラ〜リ感は初代レンジローバー(基本的に同じ方式)にも通じるアジでまたたまらない。初めて体験すると不安になったりあるいは「うわ古ぃ〜」とか思ったりするかもしれないけれど害はない。というか、そのユラ〜り感は高い接地性(あるいはピーキーな接地変化をしないこと)とセットなのだからむしろ喜ぶべし。
旧ジュリア系に関して、「サーキット走ると155なんかより速いんですよ」なんて体験者あるいは達人はよくいう。「またまたぁ」なんて思ったりはするけど、でもそれ、あながちウソではないかもしれない。実際、このスパイダーも峠でユーノス(当時)より安心してしかも速くトバせたりしたし。行ったなあ鳥海山(たしか秋田県)。 |