ダンサー。それも生まれつきの。
で、ベータ・スパイダー君はどうだったか。これがけっこうヨカッタ。スロットル一定の旋回だとガンコなアンダーステアが出て、でもってスロットルを急激に戻すとイッキにケツが出る、という(昔の)FFの悪いクセをどうにかしてなくしたい、というキモチがけっこうビンビンに伝わってきた。
まず、ターンインがすごい素直。ダンパーはすでにヌケヌケだしバネだってそんなにカタくないのに、あんまりロールしないでスーッと(ピピッと、ではなく)ハナが入る。パワステつきでラクってこともあったにせよ、リトモ“イノシシ”130TCあたりと違って「えいやあ!」とか「どりゃあ!」系では全然なし。いと優美。その際リアサスはでしゃばらず、フーッという感じで曲がる動きを助けてくれる。「曲がる動きはもういいな」と思ったあたりでスロットルペダルを踏み込むと、今度はそのリアサスがスイッとキレイに沈む感じに動いて姿勢が安定(マルモさんによるとリアのコイルはすごい柔らかいそうだ)。
いかにも細くて長いアシが上手〜く動く感じ。ゴルフ2あたりとも全然違う走り。筋トレで足腰鍛えたというよりは生まれつきダンスが上手、みたいな。ジーン・ケリーよりはフレッド・アステア、って感じか(ちょっとカルチャー系)。たしかに、20ウン年前にこれ乗ったらたまげるのもムリはない。そらマネするよ。でも、こんなにキレイに走るFFの日本車にワタシは一度も乗ったことがない。
あとそう、オープン系ということで気になる(笑)ボディ剛性は別にヤなとこなし。だって実質は大型サンルーフ+後ろだけ幌だから。ロールバーはブッ太いのがあるし、いわゆるタルガトップとは違って屋根外してもドアの上んとこにはちゃんと柱が残ってるし。
マルモさんにいわれてハッと思ったことに、このベータ・スパイダーは「3速の中速域を使って走るワインディングがめちゃめちゃキモチイイ」そうだ。2速でギャンギャンでも、また4速5速でバビューンでもなくて。たしかに。でまた、清水市周辺にはそうやって走れる絶好の道があるそうな。名前忘れたけど、山梨のほうまで続いてる道で。いいなあ。
もっと楽しく走りたいって思っていきなりアシかたくしたりキャブでかくしたりタイヤ太くしたりする人が多いじゃないですか。でも、それってちょっと違うんじゃないかとワタシあたりは思うわけですよ。部品売ったり取っ替えたりする店の人は喜ぶだろうけど。マルモさんも、〈ベータ・スパイダーはこう走ると最高〉というシチュエーションをきっちり見つけたから「クルマは現状で十分満足」になっている。たんにカネがないからとかそういう理由でイジりを控えているわけでは別にない。実際、A112アバルトとか乗ってたときは絵に描いたようなギャンギャン系で楽しんだらしいし。
さすが坊さんだけあって考えてる。日蓮宗だからえーと、ナムミョウホーレンゲキョーか。多額の御布施をはずんだり広大な田畑を寄付したりしなくても、そのフレーズを唱えるだけで救われる(違ってたらスイマセン)。一見弱気なだけみたいに見えて実はかなり攻撃的な思想でもある。それに、ベータ・スパイダーけっこう速かった。後ろからメガーヌで追っかけたら。89psのクセしやがって(笑)。
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