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第4回 BRESCIA 1000MIGLIA |
BresciaはMilanoからVenezia行きの列車に乗って約50分。
ロンバルディア州でミラノに次ぐ第2の都会です。
中世から武器製造の街として栄え、その伝統のもと現代においても工業都市として発展してきました。
住民の所得水準も高く、街並みは整然として清潔な印象を訪れる人に与えます。
ミラノから行く場合、足はやっぱり列車が一番。Veneziaに行く観光客に混ざって1等のコンパートメントでゆったりと、なんていうのは最高でしょう。
どうしてもクルマで、という方は、レンタカーを借りてアウトストラーダのMilano-Venezia線 を走ることになりますが、ここはほとんど毎日渋滞しています。
それにBrescia市内で駐車場を見つけるのも一苦労です。1000MIGLIAの車検場になるヴィットリオ広場の地下は広大な駐車場になっていますが、イベント当日にここに駐車するのは至難の技です。ですから、是非列車でどうぞ。
ということで、さて、いよいよBresciaです。今回のテーマ1000MIGLIAは、この地を起点としてローマまでの往復約1000マイルを競う、伝統的な自動車レースです。なんていうことは皆さんもう十分にご承知でしょうし、1000MIGLIAの起源をここで語ることも今回の本旨ではありません。
そのあたりのことは数多ある1000MIGLIA関連の書籍がよりよく伝えてくれると思いますので、ここでは1000MIGLIAを日本から観戦しに行く時の楽しみ方を主眼に、話を進めていきましょう。
狙い目は木曜日の車検
1000MIGLIAは例年日本の5月のゴールデンウィーク近辺に開催されますが、年によって多少のバラツキがあります。
ちなみに今年は5月25日〜28日の4日間。
ゴールデンウィークに開催される年は仕事を持っている人間にも行きやすいのですが、この時期は航空券が高めで痛し痒しといったところです。
いずれにしても、日程が限られている個人旅行あるいはツアーの自由行動日を利用して1000MIGLIAを観戦しようという場合、当然レースの全行程を追いかけるなんてことは出来ません。
ですからもっとも効率的に1000MIGLIAの雰囲気に触れられるよう計画を立てる必要があります。
いちばんのおすすめは、初日の車検からその日のスタートまでをBresciaで過ごすことです。
1000MIGLIAの日程は曜日でいうと必ず木曜日〜日曜日というように設定されています。ですから、初日の車検とはすなわち木曜日。
この日一日をBresciaですごす時間として確保しておけば、 1000MIGLIAのすべてとはいわないまでも、かなりの部分を濃密に味わうことが可能です。
木曜日の朝から、車検会場となるヴィットリオ広場には参加車輛が続々と集まってきます。
広場内には仮設テントが張られ、1000MIGLIA関連のグッズもここで買えます。
メインスポンサーのメルセデスのテントショップには、魅力的な1000MIGLIAアイテムが溢れています。
ただし、すべてスリーポインテッドスター付ですが。
時間的には午前9時くらいから会場の周辺を歩いているのがベストです。
博物館でしかお目にかかったことがないようなヴィンテージ・フェラーリが、Bresciaの街並の中を排気音も勇ましく会場に向けて走っていきます。
自分がどの時代に生きているのか、一瞬わからなくなってしまいます。
特別に交通が規制されているわけでもない街なかを、周囲の景色に見事に溶け込んでかつての名車が走り抜けていきます。
こうした雰囲気の中、気分はどんどん高揚してゆきます。
路肩に無造作に停められたスタンゲリーニのコクピットを覗きながら、もう一方で走り去ってゆくヴィンテージ・ジャガーの後姿にうっとりする、なんてことの連続です。
赤いクルマが多いせいかもしれませんが、Bresciaの街が徐々に燃えたってくるようです。
スタートは見られない!?
午前10時を過ぎると、会場のヴィットリオ広場はまっすぐに歩くことが困難なほどに人とクルマ(参加車輛)で溢れかえります。
フェラーリの周りは例外なく人だかりができています。
さあ、ここで1台1台のクルマを仔細に観察していきましょう。
フォトジェニックなクルマたちを撮影するのもこの時がベスト。
存分に寄って撮れますし、オーナーに声をかけて話をしてみるなんてことも、きっと出来るはずです。そんなふうにしてクルマと人の間をグルグル回っているうちに、会場の一角ではスポンサーによる記念グッズの無料配布なんていうのも始まって、慌ててそこに急ぐことになります。フラッグ、キャップ、その他のノヴェルティグッズが手に入ります。
5月の陽光の下、そのころにはきっと汗ばんできていることでしょう。
ミネラルウォーターは必需品です。
さて、こうして長くも短い1000MIGLIAの1日が過ぎてゆくのですが、スタートは夜8時過ぎからです。そして残念なことに、実際にこのスタートを間近で見るためにはそのためのパスを持っていなければならず、それなしにはスタート地点に近づくことも出来ません。
ですから、こうして車検日に車検会場に集まるクルマを眺めているのが、実はいちばん贅沢な時間なのです。Bresciaに集まるヴィンテージカーの数々、そしてそのクルマに魅入られた世界中からの人々の醸し出す熱気は、そこを訪れる人間に1000MIGLIAの華やぎをあますところなく伝えてくれます。
そしてこればかりは書籍やヴィデオからは絶対に感じ取れないこと。
クルマという観点からだけでなく、このような文化がイタリアには存在することを知る上でも、貴重な体験になることと思います。
今回は1000MIGLIAのエッセンスを「効率的」に味わうという趣旨ゆえにストイックなイタリア車ファンには怒られてしまいそうな内容になってしまいましたが、限られた時間の中での観戦にはこれが一番だと確信しています。
ただひとつイタリアにおける1000MIGLIAについて誤解のないように付け加えれば、イタリア人でも1000MIGLIAを知らない人はたくさんいるということです。
レースの経由地となっている地方の人を除けば、もしかしたら知らない人の方が多いかもしれません。かつて僕自身、1000MIGLIAはイタリアの国民的行事で、ああ、やっぱりイタリアは凄いなと思っていたのですが、それはちょっと違っていたようです。
トリノでホテルの従業員たちと話をしている時に、1000MIGLIAの話題をだしたのですが、だれも知らなかったので拍子抜けした記憶があります。日本の自動車メディアがちょっとオーバーに書き立て過ぎなのでしょう。
さらに付け加えれば、ご当地イタリア国内において、1000MIGLIAそのものに対しての批判がないわけではありません。
いわく、1000MIGLIAはもはや、かなりの部分露骨な商業イヴェントである。いわく、クルマが好きで、出場資格のあるクルマを持っている、というだけでは参加することができない。いわく、一部の特権階級(お金持ち)の道楽に過ぎない、等々。
たしかに会場に一日いるとそんなふうに感じることがないわけではありません。出場台数が数百台にものぼる大イヴェントになったがゆえに、1000MIGLIAはそれゆえにいま、ターニング・ポイントに立っているのかもしれません。 |
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