2002年も1年間、こんな拙文にお付き合いくださりありがとうございました。この稿を始めて、もう3年になりました。イタリアでの仕事の合間に経験した、こんな極私的なイタリア物語を書き連ねることに、一体どんな意味があるのか、という思いは今も拭えません。でも、ただひとつだけ、確信をもって言えることがあります。イタリア自動車雑貨店に並ぶ品物は、僕がここに書いてきた「イタリア」の空気をまとって届けられている、ということです。
現地駐在員なんてしゃれた人間もいませんので、私たちイタリア自動車雑貨店は自分たちの足でひとつひとつの品物を探し続けなければなりません。この8年間、僕が一介の旅行者のような立場からスタートして、現地での生活者の視点を少しずつ自分のものにする過程で、たくさんのイタリアの人々を知りました。そして、そういう人々ひとりひとりが、イタリア自動車雑貨店の名で日本に向けて送られる品物に、直接、間接にかかわりをもってくれました。僕が書きたかったのは、そういう人々の物語です。アルファロメオを生み、アルファロメオを愛したイタリア人の気持は、そこに生きる人々の日常の中にこそ息づいていると思うからです。だから、“ラテン”などという大雑把な概念や、あるいはそこから連想される座りの良い形容詞に依拠してイタリアを括ってしまうことなんて、いま、僕には到底できなくなりました。
この店を始めたとき、3年続くだろうか、という不安がありました。3年経つと、5年目を迎えられるのだろうか、と思いました。そんなふうに相談相手もいなかった自分の背中を、イタリアの人々がいつも力強く押してくれました。だいじょうぶだ、続けることだよ。続けることがいちばん大切なんだから、と。
“passo dopo passo”(一歩一歩)と彼らは言います。そう言われつづけて、いつしかそのイタリア語が僕の十八番にさえなりました。
イタリア自動車雑貨店自体、まだまだ、皆様のご期待にじゅうぶんに応えきれていないと思っています。たくさんの不手際もあり、お叱りを受けたことも多々ありました。ご迷惑、ご不便をおかけした皆様にはこの場を借りて心よりお詫び申し上げます。
2002年、ほんとうにありがとうございました。今年、2003年も“passo dopo passo”、私たちの「イタリア」をお届けしていく決意です。皆様のご支持を糧に
“Independent & Different”、また新しい世界を切り拓いていこうと思います。
皆様の2003年が幸多きものとなること、心よりお祈り申し上げます。
イタリア自動車雑貨店
太田一義
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